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【PMBOK第6版】プロジェクト契約のタイプ

一口にプロジェクトといっても、プロジェクトの形態はさまざまです。

特に、社内プロジェクトではなく、顧客向けに提供するプロジェクトの場合には、そのプロジェクトの性質は契約によって大きく左右されます。

 

PMBOK第6版では、プロジェクト契約の種類について、12章 プロジェクト調達マネジメントで説明しています。

 

本記事では、プロジェクト契約の種類と特徴について解説します。

 

概要

まず、すべての法的な契約関係は以下の2つのグループのいずれか、あるいは両方を複合したものに分類されます。(PMBOK 471ページ)

  • 定額契約
  • 実費償還

両方を複合したものは、タイム・アンド・マテリアル契約といいます。

 

それでは、それぞれの詳細を見ていきましょう。

 

定額契約

定額契約は、その名の通り、定義されたプロダクトやサービス等(これをスコープと呼びます)に対して決まった金額を定めます。

提供者は、契約で決まった金額以上の請求ができないので、スコープに著しい変更が予測されない場合に本契約が採用されます。

英語ではFixed Priceといいます。

定額契約には以下の種類があります。

 

完全定額契約 (FFP)

英名はFirm Fixed Price。

一般的に定額契約というとこちらの契約を指すことが多いです。

この契約の利点は、購買者からすると契約時点でプロジェクトにかかる総額が決まるという点にあります。(ただし、スコープが変更されない限り。)

逆に言うと、提供者は決まった金額しか受領できないため、プロジェクトのコスト増のリスクを負うことになります。

 

定額インセンティブ・フィー (FPIF)

英名はFixed Price Incentive Fee。

この契約は、定額に加えて、あらかじめ合意した評価尺度の達成によって金銭的インセンティブが追加される契約です。

ただし、金銭的インセンティブについても価格上限が定められ、上限を超えるコストは提供者側の負担となります。

 

評価尺度としては、コストやスケジュール、技術的パフォーマンスなどが用いられます。

この契約のメリットとしては、プロジェクトのパフォーマンスの許容範囲に幅ができる点が挙げられます。

たとえば、納期がぎりぎりのプロジェクトにおいて、納期内であれば金銭的インセンティブが払われる場合、一般的に完全定額契約の場合に比べて提供者が納期内に成果物を提供する確度は上がることが期待されます。

 

なお、定額インセンティブ・フィー契約における支払い金額の計算問題はPMP試験の定番問題なので、確実に解けるようにしておきましょう。

 

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経済価格調整付き定額 (FPEPA)

英名はFixed Price with Economic Price Adjustment。

この契約は、インフレによる変化や、特定物資のコスト高騰や下落など、市場環境の変化に応じて事前に定義した調整を契約価格へ反映できるようにしておく契約です。

 

プロジェクトが長期にわたる場合や、支払いに為替が絡む場合(日本企業と米国企業の取引など)に本契約が採用されます。

 

 

実費償還

このタイプの契約は、作業にかかったすべての正当な実コストを、納入者の利益相応分を加えて購入者が支払います。実費を償還するとはこのことを指します。

この契約は、契約の実行中に作業スコープが著しく変更されることが予想される場合に採用されます。

 

コスト・プラス定額フィー (CPFF)

英名はCost Plus Fixed Fee。

この契約では、支払い金額は以下の合計となります。

  • 納入者が引き受けた作業にかかった許容されるコスト償還
  • プロジェクトの当初見積もりコストに一定比率をかけた定額フィー

定額フィーについては、スコープが変更されない限り途中で変更されることはありません。

 

納入者としては、プロジェクトコストは実費で償還でき、利益分は定額で確保できるためリスクが少ないというメリットがあります。反面、購入者からすると、プロジェクト終了時までプロジェクト全体の費用が決まらないというデメリットがあります。

 

コスト・プラス・インセンティブ・フィー (CPIF)

英名はCost Plus Incentice Fee。

この契約では、支払い金額は以下の合計となります。

  • 納入者が引き受けた作業にかかった許容されるコスト償還
  • あらかじめ取り決めたインセンティブ・フィー(契約で定めたパフォーマンス目標を達成した場合のみ)

 

契約によっては、最終コストが当初の見積もりコストを上回ったり下回ったりした場合に、購入者と納入者の双方が事前に取り決めた分配比率に応じて、コスト差額を負担します。

 

コスト・プラス・フィー契約における支払い金額の計算問題は、FPIFとあわせてPMP試験の定番問題です。こちらの方が参考書等の練習問題では頻出でした。

 

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ただ、この契約は私は実務では見かけたことがありません・・・。

 

コスト・プラス・アワード・フィー (CPAF)

英名はCost Plus Award Fee。

この契約では、支払い金額は以下の合計となります。

  • 納入者が引き受けた作業にかかった許容されるコスト償還
  • アワード・フィー(契約で定義された、主観的な範囲のパフォーマンス基準を納入者が満たしたと購入者が判断した場合のみ)

 

キーとなるのは、この契約で定められるアワードの有無は、あくまでも購入者が主観的に一方的に判断できるという点です。この判断に対して、納入者は不服を申し立てることはできません。

 

そのためだと思いますが、この契約も私は実務で見かけたことはありません・・・。

 

タイム・アンド・マテリアル契約 (T&M契約)

この契約は、実費償還と定額契約の両方の側面を複合させたタイプの契約です。

正確な作業スコープを定めることができない場合に要員補強をしたり、専門家を調達したり、外部から支援を求める場合に採用されます。

要員が稼働した実時間に対して単価をかけて支払い金額が決まります。

 

コンサルティングプロジェクトや一部のSIビジネスなど、人が稼働すること自体で費用が発生する場合にこの契約が有効な一方、一部のシステム保守案件では購入者側がコスト削減のため、実稼働時間に対してのみ金銭が払われる本契約を悪用するケースも見られます。

 

最後に

本記事では7つの契約タイプについて解説しました。

うち、実務でよく目にするのは

  • 完全定額
  • 経済価格調整付き定額
  • T&M契約

です。

 

一方でPMP試験でよく出題されるのは

  • 定額インセンティブ・フィー (FPIF)
  • コスト・プラス・インセンティブ・フィー (CPIF)

です。

どちらも取りこぼしのないようチェックしておきましょう。

 

本記事が実務や試験対策に役立てば幸いです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

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